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「どの物件でもいいから家を買え」と本気で思う不動産屋。その理由は?
一度でも不動産会社に問い合わせると、あのしつこくてウザったい不動産屋の電話営業が始まります。
お客さん側としては恐怖に感じることもありますね。
でもなんで不動産業界だけはこんなに押し売りがはやるんでしょうか。実はそれには明確な理由があります。以下のような不動産取引の構造があるからです。
- すべての物件は業者間で共有している(どの業者でもどの物件も取り扱える)
- 契約してくれないと仲介手数料なし(他社で契約されたら報酬ゼロ)
つまり、他社の仲介会社に契約を取られる前に自分のお客さんを契約させる必要があります。
確かに不動産売買は金額も大きく、仲介手数料の額も大きいです。
ただ、それよりも「契約させないと報酬がゼロ円」という恐怖感が、契約を迫る「売り込み」につながっている最大の理由です。
だから、物件の悪いことは言わないし、スピード勝負の押し売りが横行するのですね。
「この物件は他社で契約されたらまずい」「お客さんの気が変わらないうちに、さっさと契約させよう」と、ある意味、営業マンも他決の恐怖感から何度も何度も営業をかけてくるのです。
さらにいえば、物件ばっかり紹介する不動産会社は、「どんな物件でもいいから、お客さんが家を買ってくれたらそれでいい」と思っています。かなり本気でそう思っています。
お客さんがどんな家を買うかは他人事であり、それよりも自分の稼ぎが他社の営業マンにとられないことだけに必死なのです。
国交省が管轄する物件データベース「REINS」が押し売りの原因に?
国交省は、不動産屋が売主から物件を預かったら、「REINS(レインズ)」という業者専用の物件データベースにすぐに掲載するよう促すシステムを作っています。
活発に不動産取引させる組みの賜物がREINS(レインズ)なのです。
不動産屋全体で物件情報を共有し、業界一丸となって買主をみつけるという仕組みができています。そのおかげで、どの不動産屋に行っても、ほぼすべての物件を取り扱えるようになっています。
しかし、不動産屋同士は競争相手です。
他の会社が買主をみつけてくる前に、なんとしてでも自社で契約させようという動機が働いてしまいます。
だから、「他社に取られる前に自社で契約してくれないと困る」「どんな物件でもいいから、家を買ってくれたらそれでいい」と思うのです。
言葉を変えれば、買主(お客さん)が家を買った後のことは二の次で、スピード勝負の「押し売り」を仕掛けてくるのです。
REINS(レインズ)の利便性が、逆に「押し売り」を生むという、なんとも残念な取引を生んでしまっているのですね。
さっさと契約させたもん勝ちの世界。契約の後は責任を負わない不動産屋
さらに、不動産会社の営業担当者は、給与も「歩合制」であることが少なくありません。
契約本数が多いほど、額が高いほど、その月の給与が高くなります。会社間でも競争、社内でも競争しているのです。
さらにさらに悪いことに、宅建業法という法律上、不動産会社の責任は「契約まで」です。買った後のことは法的にも買主の責任になります。
仲介業者は家を買った後のお客さんの暮らしはどうでもいいと思っているかもしれません。
つまり、不動産取引を一言で言えば「さっさと契約させたもん勝ち」の世界になっているのです。
だから「時間のかかること」「契約が遠のくこと」はしたくありません。
家を買うってかなり大きな取引です。しかも、長い間住宅ローンをコツコツ返済していくものです。
それなのに、物件内容を細かく調査する、建物に欠陥がないか建築士によるインスペクションや耐震診断をして調べる、住宅ローンの返済に困らない生活ができるか事前にファイナンシャルプランを立てる…などは積極的にしません。
さらに、売りたい(契約させないと報酬がゼロ)と思うため、売主の味方になって買主に接してくるかもしれません。
売主に嫌われたら「ごちゃごちゃうるさいから、他のお客さんに売るよ」と言われかねず、不動産屋さんはどうしても売主寄りになってしまいがちなのですね。
物件情報で買主を釣るのが手っ取り早い。だからおとり広告が横行する
「おとり広告」は未だになくなっていません。何十年も続くこの古典的な手法がなくならないのは何故でしょうか?
それは、この手法は今でも手っ取り早く儲かるからです。
逆にいえば、少なからず買主は物件情報に釣られて気づかず危険な取引をしているということです。
そして、多くの不動産会社は、お客さんに対して提供できるのが「物件情報」しかないからともいえますね。
昔はそれでも成り立っていました。物件情報を消費者が入手するルートは、物件情報誌などに限られ、広く簡単に手に入れられるものではなかったのです。物件情報を提供すること自体にも価値があったといえます。
しかし、今やネット社会でいとも簡単に手に入ります。
そうすると、とんでもなく魅力的な嘘の物件を掲載し、嘘でもいいから「お客さんを自社に来店させよう!」とする動機が昔にも増して強まります。
来店したお客さんに「この物件は売れてしまいまして…」などと嘘を重ね、他の物件で契約してもらうのです。
実は物件情報サイトも?自社に来店させて他の物件をバンバン紹介する
このような物件でお客様を“釣る”手法はいたるところで見受けられます。
実は、その最たるものが、SUUMOなどの物件情報サイトです。決して、SUUMOが悪いと言っているのではありません。その使い方が問題となる場合があるということです。
例えば、違う不動産会社が何社も、同じ物件情報を載せていることがよくあります。はたして、たくさんの不動産業者が同じ物件情報を載せまくることが買主にとってよいことでしょうか。
先ほど説明した通り、ほぼすべての物件情報が載ってある業者用の物件サイト「REINS(レインズ)」を見れば済む話です。
業者向けに、写真の撮り方のノウハウを教えるセミナーまであるほどです。内覧で実物を確認すれば済む話ですが、それでもポータルサイトに一生懸命掲載します。
お客さんを自社に来店させ、他の物件も紹介して、なんでもいいから契約してもらうことを狙っているからです。
本来であれば、物件情報と共に、例えば以下について具体的な説明も周知する方が親切でしょう。
- なぜその物件金額なのか?割高・割安ならその理由は?(価格の妥当性)
- 将来、この物件は売りやすい・貸しやすいのか?(流動性)
- 土地・建物は安全か?特に耐震性は?インスペクションや耐震診断の必要性は?(安全性)
- 使える税制優遇制度はないか?特に最大400万円が返ってくる住宅ローン減税制度を使えるか?
- マンションなら管理状況は良好か?修繕計画は?管理費・修繕積立金は妥当か?
- 戸建てなら土地の資産性はあるか?接道、セットバックの有無、容積率・建ぺい率など
繰り返しますが、民間のポータルサイトは物件を広く周知させ、意味のあるものです。そして、まっとうな不動産会社はたくさんいると思います。
ただ、不幸な取引はいまだになくなりません。一部、物件でお客様を“釣る”会社がいることも頭に入れておかざるを得ません。
どういう意図で営業活動をしているか、これを知っていることはそれを防ぐことに繋がります。
買おうとしている家の価格が適正か?(価格の妥当性)、将来売りやすいか?(流動性)など、なかなか分かりづらいですよね。 これをAI(人工知能)がビッグデータをもとに一瞬で判定するアプリが「SelFin」(セルフィン)です。使い方は物件情報サイトのURLをコピペするだけ、しかも無料! その他、耐震性や住宅ローン減税の適用可否、マンションの管理状況、土地の資産性なども分かる優れもの。本格的に購入検討する場合には、不動産屋さんに相談くださいね。
買主だけが持つ武器は「嫌な不動産屋を断れる権利」。他社でも取引可能
ただ、悲観することはありません。このような業界構造だからこそ、お客さん側(買主)は大きな武器を持っています。
どの業者でも取引できるからこそ、お客さんを自社に来店させようと奪い合いが始まります。
ということは、裏を返せばお客さんが「この会社嫌だな」と思えばその会社を断ることができるということです。別の不動産会社へ行けばいいだけなのです。どこだって取引できるんですから。
「物件気に入ったけど、業者に不信感…」という場合、危険な取引を防ぐためにも、別の業者で取引すればいいのです。
一部、非公開物件と言ってその業者しか持っていない物件もありますが、だからといって危険な取引をすれば、その後、何十年と不安な生活を送ることになるかもしれません。
安心な取引を行えると感じる不動産会社を選びたいですね。
不動産屋さんの選び方は以下の記事を参考にしてみてください。
不動産屋を見分けるたった1つの質問「REINSを一緒に見せてください」
不動産会社を見極めるための誰でもできるシンプルな方法は、一言、「レインズを見させてください」と聞いてみることです。
ただしタイミングがあります。いきなり聞いてしまってはいけません。
いきなり聞いてしまっては、(なんだ情報だけ抜き取るつもり…?)(不動産業界の関係者かな…?)(家に詳しそうだからやりづらそう…)などとネガティブに思われてしまう可能性があります。
仲介会社と具体的にやり取りをする中、どうも偏った物件だけ紹介されたり、物件のいいことばかり言ってきて不信感を抱いたタイミングでお願いしてみましょう。
「レインズという物件データベースがあると聞いたのですが、私もそれを直接見ながら選ばせていただけませんか?」といった風に聞いてみるといいでしょう。
もちろん、会社の方針などもあるため、見せないからといって悪い会社ではありません。ただ、頑なに閲覧を拒否する場合は要注意です。
REINSを見せると「他の不動産屋でもこの物件を買えるんだ」とバレる
見せたがらない理由は、「売主側の仲介業者が記載されているから」です。
つまり、お客さん(購入検討者)がレインズをみて、売主側の不動産会社(元付仲介業者)がわかり、直接その会社に行かれてしまっては報酬がゼロになってしまうからです。
または、レインズから印刷した販売図面を持って、隣の不動産屋に行かれるのを恐れます。
REINSに記載されている不動産会社の名前を見て「この会社はなんですか?」と聞かれ、「これが売主側の不動産屋さんです…」と答えたとしましょう。
お客さん(買主候補者)が「あれ、他の不動産会社でも取引できるんだ…」と分かれば、隣の不動産屋さんに行かれてしまうかもしません。
お客さんにとっては、行った先の不動産会社で仲介手数料を支払うので同じことといえますが、不動産仲介会社の立場からすると大違いです。
契約した不動産会社だけが報酬を得るという仕組みであるため、他の業者に行かれては売り上げがゼロになり死活問題です。
逆の視点でみてみると、物件情報を宝物のように隠す業者は、不動産を検証するノウハウが乏しいともいえるかもしれませんね。
もし、検証能力があったり、仲介サービスで差別化できれば、物件情報を持ち出されても他社にはそのノウハウはありません。
そうすれば、お客様は他社に行くメリットがありませんから。
不動産取引の登場人物は、下の図の通り【売主】-【元付仲介業者(売主側の不動産屋)】-【客付不動産屋(買主側の不動産屋)】-【買主】と4人います。
REINSに記載されているのは、元付仲介業者です(もしくは、売主が不動産業者の場合は売主が記載されています)。
この時、買主が直接元付仲介業者に訪問してももちろん取引はできますが、かなり危険な取引になります。
というのも、元付仲介業者は売主から販売を依頼された不動産会社です。当然、売主に有利な交渉を持ち掛けられます。
さらに、元付仲介業者は売主からも買主からも仲介手数料をもらえるため、儲けが2倍になります。なんとしても契約を成立させたいと思います。押し売りです。。
もしくは、「仲介手数料無料にしますよ!」と甘い言葉をかけてくるかもしれませんが、物件についてはほとんどノーチェックで危険な契約になる可能性があります。
十分注意してくださいね。他の不動産会社に行くなら、買主に寄り添う客付け仲介会社(物件を売主から預かっていない会社)にいくことをお勧めします。
面倒な調査はしない。両手仲介を狙ったり仲介手数料無料に頼ったり…
物件はどの不動産会社でも取引できるため、どうしても買主の奪い合いの構造が生まれます。
「ささ、内覧にいきましょう」「この物件素敵ですよ、契約しましょう」と急かさざるを得ないという状況があることをみてきました。
建築士によるインスペクション(建物状況調査)や耐震診断を実施する、住宅ローンの返済が住宅購入後の生活を圧迫しないかを調べるファイナンシャルプランを立てる、などは時間がかかって面倒なのでやりたがりません。
他社に買主が流れるかもしれないため、REINS(レインズ)もみせたがりません。
代わりに、両手仲介ができる新築戸建て物件(業者が売主のため売主と買主の間に入る仲介業者が1社)を多く勧めてきたりします。
新築だと建物が綺麗で契約に結びつけやすいという理由もあります。営業がしやすいのです(決して、すべての新築戸建てが悪いと言いたいわけではありません)。
もしくは、契約をたくさん取ろうと、仲介手数料無料とか半額とか、一番簡単な営業手法を取り入れて、両手物件だけバンバン紹介したりします。
結果、「手数料が安くなる!」と一時的な目先の利益に惑わされ、実は「その物件にリスクはないか?」などを調べないという危険な取引が行われやすいです。その後何十年と後悔することになるかもしれません。
今後は物件紹介ではなく、調査・検証を行う不動産会社が求められる
インスペクションを促す改正宅建業法が日本でも定められ、さらに国が安心な中古物件にお墨付きを与える「安心R住宅」も2018年4月から始まります。
これは、不動産屋さんに「物件紹介と契約業務だけでなく、物件そのものをしっかり調査しないとお客さんに相手にされなくなるぞ」というメッセージとも受け取れるでしょう。
特にアメリカでは、中古の物件を買ってメンテナンスすることで資産価値を維持し、購入価格と変わらない金額で(もしくはより高値で)売却するということは結構当たり前にやられています。
だからこそ、家を買う時には物件情報よりもそれをしっかり調査・検証するエージェント(不動産営業担当者)を先に選びます。
日本でも、これからは物件情報だけ受け取るのではなく「この物件のリスクはなに?」「不動産のプロとして、この物件は買っていいものなの?具体的なデータと共に説明して」という風潮ができてくるでしょう。
物件は1つでも不動産屋さんは100社も1,000社も選ぶことができます。
目先の契約(業者利益)ばかり気にする不動産会社ではなく、大きな金額が動く不動産取引を心から任せられる不動産エージェントを選んでから、家探しをしてくださいね。
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